| 【第5回】“名案”も時代に恵まれず |
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創業いらい10年前後という時期は、ビッグサンズ体質変化の節目になった。 それまで、技術革新のアイデアを連発し、大メーカーにOEM(相手先ブランドによる生産)供給を実現した。表彰状を何枚も獲得した。ただし「表彰状をもらっても金が残らない」会社じゃいけない、と村田社長は言いつづけた。 その期待を担ったのが、 「パソコンネットワークによる美術品販売」 「チラツキのない立体映像・3D」 「電子ディスプレー」(看板の電子化) の3分野である。 これで脱皮を期したのだが、1つはうまくいったが、2つは逆にうまくいかなかった。 もちろん、ほかにも多くの事業を試みている。なにしろ"アイデア連発"企業なのだ。すべてを語りつくすのは無理である。3つに焦点を絞る。 「パソコンによる美術品販売」は、うまくいかなかった部類である。 フランスの新聞社の保有するリトグラフを、すべてビデオに入れる。その端末を百貨店などに置き、ユーザーの操作によって呼び出し、画面上で見てもらって、注文を受ける。 売り手には、美術品の保管・維持の費用がかからず、宣伝費や販売コストも低くなる。広い範囲の顧客に呼びかけられる。お客にも手間をとらせない。 「いいじゃないか」と乗り出した大手商社とのジョイントで、新会社を設立した。 結果として、それほど売れなかった。商社もビッグサンズもしびれを切らし、新会社の解散に踏み切った。そのあと、なんとバブルがやってきた。美術品ブームがきたのである。 売れ残り商品を抱えていたビッグサンズにも、注文があいついだ。 「もう少し遅く始めておれば」とだれでも思う。村田社長は残念がりはしなかった。 社会の動きと、新規事業の狙いとの乖離(かいり)。ビジネスの世界ではよく起きることである。売れ残りを買ってくださる方がいて、軽いやけどですんだ幸運に感謝しなければならない。 うしろを振り返るな、というのも村田社長の心がまえである。 ところで、なぜ、美術品の販売に目をつけたのか。 これは村田社長の"ささやかな体験"による。ビッグサンズ本社の近くに関西有数の画廊街がある。散歩がてらのぞくうちに、美術品の売買には素人にはわかりにくい面があることに気づいた。 「わかりやすくすればいいのに」と思ったのが、きっかけである。 このシステムは、いま、中古自動車オークション業界で活用されている。社会のシステムを、コンピュータによって進化させたい、という考え方の基本は正しかった、といってもいい。 つぎは、「立体映像・3D」である。 (村上順一郎) |
